レビュー論文ならぬレビューブック「『がんの本』を読み解く本」2025年6月10日発売

突然ですが、「レビュー論文」というものをご存知でしょうか。
科学の世界には「原著論文」があります。これは個々の研究者が行った実験や調査の結果をまとめたものです。一方、「レビュー論文」は異なります。特定のテーマに関する複数の原著論文を集め、それらの内容を整理・分析します。一つの論文をわかりやすく解説するレビューにとどまらず、複数の原著論文からその分野の研究動向や現時点での到達点、今後の課題などをまとめた論文です。新しい発見を報告する原著論文のようにノーベル賞の対象になることは稀です。しかし、その分野の全体像を把握したり、信頼できる情報を効率よく得たりするためには非常に役立ちます。特に私たちの日々の健康に関わる臨床医にとっては、価値の高い実用的な論文とされています。
本書はいわば、がんに関する一般書における「レビュー論文」ならぬ「レビューブック」を目指しました。世の中にはがんに関する書籍が数多く出版されています。専門的な医学書から患者さんの体験記、食事療法や代替療法を解説するものまで様々です。まさに玉石混交と言えるでしょう。がんという病気に直面したとき、多くの人が情報を求めてこれらの本を手に取るはずです。あるいは身近な人ががんと診断されたときも同様でしょう。しかし情報は多すぎます。そのため「どれを信じれば良いのか」「何から始めれば良いのか」と混乱してしまうことも少なくありません。
そこで本書が生まれました。私自身、50代のサラリーマンとして「悪性縦隔腫瘍(胸腺腫)」というがんの一種を経験しました。その中で読み漁ったのは、Amazonなどで比較的手に入りやすい「がんに関する書籍」です。それらの内容を私自身の体験と照らし合わせながら整理し分析しました。そこから見えてきた「2025年現在のがんとの向き合い方」の全体像を提示します。可能な限り客観的に、そして分かりやすくお伝えしようと試みています。
学術論文のような厳密な査読を経た原著論文を参考文献にしているわけでも専門家の査読を受けているわけではありません。しかし参考文献としたものは販売されている書籍であり出版社の校閲が入っていますし、一般読者のAmazonレビューが公開されています。本書も薬機法の観点から自主校閲を入れておりますし、Amazonレビューにもさらされます。そのため根拠の不明確なインターネット情報よりは一定の信頼がおけると私は考えています。
本書は医師や研究者が最新の治療法を発表する本ではありません。また、奇跡的な回復を遂げたスーパーマンの闘病記でもありません。著者は読書と書籍レビューを書くことを趣味とするごく普通のサラリーマンです。だからこそ、同じようにがんと向き合う患者さんやそのご家族の目線に立てると信じています。専門用語をできるだけ避けながら書きました。「今、私たちが知っておくべきことは何か?」「情報の洪水の中で、どうやって自分なりの道しるべを見つければ良いのか?」そんな問いに一緒に向き合っていけるのではないかと考え、筆を取りました。
この本が、がんという病気に対する漠然とした不安を和らげ、正しい知識を得る手助けとなり、何より、ご自身や大切な人が納得できる選択をするための一助となる。それが私の心からの願いです。
それでは、私、半澤和洋と一緒に、複雑で奥深い「がん」の世界を少しずつ読み解いていきましょう。
~以上はじめにより~
~~妙録~~
本書は、がん情報が氾濫する現代において、患者さんとそのご家族が信頼できる情報を見極め、納得のいく選択をするための一助となることを目的としています。具体的には、Amazonで入手可能な一般向けがん関連書籍と、著者自身の悪性縦隔腫瘍胸腺腫の体験をレビューし分析しました。そして、現代におけるがんとの向き合い方に関する実践的な知見を提示します。
入手可能な複数の書籍の内容を整理し、比較検討しました。さらに、著者自身の診断から治療、経過観察に至る体験と照らし合わせました。特に、がんの概念、標準治療、自己療法(攻め・守り)、個別化、心理的側面という多角的な視点から考察を深めています。
上記の方法により、以下の主要な知見・考察が得られました。
〇がん概念のアップデート:がんは特別な病ではない
「2人に1人ががんになる」という言葉の背景には、がん細胞の普遍性(日常的な発生と消滅)と、飛躍的に進歩した発見技術があります。がんは特別な病ではなく、老化とも関連する細胞の変化です。この理解が、冷静な対応への第一歩となります。
〇標準治療の基盤的役割:科学的根拠に基づく最良の選択
多様な治療法が存在する中で、科学的根拠に基づく標準治療(手術、放射線、薬物療法)が、依然として治療戦略の基盤です。ただし、その選択と実践においては、医師・患者・家族間の十分な対話と協働による、個別化された意思決定プロセスが不可欠です。
〇「攻め」の自己療法の可能性:多角的なアプローチ
がん細胞の増殖抑制や排除を目指す「攻め」の自己療法には、多様な考え方があります。具体的には、
1)獲得免疫の強化(がん細胞を特異的に攻撃する力を高める)
2)アポトーシスの誘導(がん細胞の自滅を促す)
3)兵糧攻め(がん細胞のエネルギー供給を断つ)
などが挙げられます。これらは食事、運動、生活習慣の改善などを通じて実践され、標準治療を補完する「総合戦略」の一環として検討される可能性があります。ただし、その科学的根拠や有効性については、個々のアプローチごとに慎重な吟味が必要です。
〇「守り」の自己療法の重要性:健康的な体づくりこそが基本
がん細胞が発生・増殖しにくい体内環境を維持する「守り」の戦略(健康的な食事、運動習慣、ストレス管理など)は、再発予防やQOL(生活の質)維持の観点から極めて重要です。これは、本質的に「健康的な体づくり」そのものであると言えます。
〇個別最適化の鍵:「自分の体の声」を羅針盤に
がんの治療法や自己療法は多岐にわたり、万人に効く特効薬は存在しません。最適な戦略は個々人によって異なります。画一的な情報に頼るのではなく、自分自身の体と真摯に向き合い、日々の変化を注意深く観察し、試行錯誤を通じて「自分に合った方法」を見つけ出すプロセスが極めて重要です。著者が実践したPH測定のような自己観察ツールもヒントに、情報リテラシーを適切に活用しつつ、最終的には「自分の体の声」を羅針盤として、主体的に選択していくことが最良の道筋となります。
〇科学を超えた要素の認識:希望を持つことの力
医学的に説明困難な回復事例も確かに存在します。「運」やプラセボ効果、あるいは「心の持ちよう」が心身に与える影響(心理神経免疫学など)に関する科学的研究も進んでおり、これらは希望を持つことの重要性を示唆しています。
【結論】
現代のがんとの向き合いにおいては、標準治療を基盤としつつ、科学的根拠を吟味しながら自己療法(攻め・守り)を組み合わせた「総合戦略」を、患者が主体的に、かつ個別最適化していく視点が求められます。本書は、そのための知識基盤と判断の枠組みを提供することを目指すものです。

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